ボクノフネ

【ボクノフネ】

就職氷河期の中、大手メーカーに就職が決まった。

6年間一生懸命に働き、ついに爆発した。
ずっと持っていた『このままで良いのか?』という爆弾。
高い給与、厚い福利厚生、大手ならではの優越感が都度不発にさせていた。

ある日、「東アジアか東南アジアかどちらか選べ」と言われた。
会社には本当に可愛がってもらったが、辞める事にした。

倒れるまでに遊んだグラウンド。
名残と期待を知らせるブラッドオレンジの夕暮れ。
『ムンッ』と沸き立つ土の匂い。
一斉に伸び盛る草花のダンス。

こんな想いが頭をよぎったからだ。
それは『好き』と共に戦い得た『想い出』だった。

人生は一度きり。
ぼくも、あの人も生きれる時間には限りがある。
だからこそ、この船の船長にぼくはなりたかったのだ。

会社を辞めて以降、10年間ぼくは饅頭を毎日作っている。
日々、たくさんの苦労と少しの喜び、そして大きなやりがいを得て、今を生きている。

ぼくは船長になったのだ。
替わりのいない、唯一の船長に。

この船の終着地は判らないし、知ろうとは思えない。
ただ、これからも『好き』と共に戦い、『大切な何か』を得て、ぼくは生きていく。

これでいいのだ。
これがいいのだ。

旅はまだ続いていく。

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